4.要監視項目「平成8年2月 水質調査の基礎知識(近畿地方整備局近畿技術事務所)より抜粋」





 環境庁通知(平成5年3月8日環水管第21号)により、人の健康の保護に関する
 環境基準の要監視項目(人の健康に関連する物質ではあるが、
 公共用水域等における検出状況等からみて現時点では直ちに環境基準項目とせず、
 引き続き知見の集積に努めるべきと判断されるもの)として、
 水質測定結果を評価する上での指針値が示されている項目です。
 これらの項目は、今後の知見の集積状況等によっては、
 環境基準項目へ移行する可能性があります。


 1)クロロホルム(chloroform CHCl3) トリクロロメタン(trichloromethane)ともいう。

  常温常圧で水より重い無色の液体で、特有のエーテル臭があります。
  かつては麻酔剤として使用されましたが、
  肝臓や腎臓に対する毒性のためあまり使われなくなりました。
  溶剤としての使用も減少しており、
  主な用途はクロロジフルオロメタン(CHClF2:フロン22)等の原料用です。

  動物実験で発ガン性が確認されており、人間に対しても発ガン性が疑われることから
  化審法の指定化学物質 (難分解性で慢性毒性の疑いのあるもの)に指定されています。

  汚染源としては、本物質を使用する工場等の排水の他に、
  浄水処理や下水処理による非意図的な生成もみられます。(トリハロメタンの項参照)


 2)トランス-1,2-ジクロロエチレン(trans-1,2-dichloroethylene CHCl=CHCl)

  1,2-ジクロロエチレンは、二塩化アセチレン(acetylene dichloride)
  ともいわれ、シス体とトランス体があります。
  性状、用途等はシス体とトランス体で大きな違いはありません。
  シス体とトランス体の毒性の比較には諸説がありますが、
  環境中での存在比率はシス体の方が大きいとされています。

  (シス-1,2-ジクロロエチレンの項参照)


 3)1,2-ジクロロプロパン(1,2-dichloropropane CH2Cl-CHCl-CH3)

  塩化プロピレン(propylene chloride)、
  二塩化プロピレン(propylene dichloride)ともいう。

  常温常圧で水より重い無色の液体で、クロロホルム臭をもち、引火・可燃性があります。

  溶剤としての用途の他に、テトラクロロエチレン、四塩化炭素の原料や、
  燻蒸剤として用いられています。(1,3-ジクロロプロペンの項参照)

  毒性は四塩化炭素より強く、動物実験では肝臓、腎臓、心臓への影響が観察されています。
  化審法の指定化学物質(難分解性で、慢性毒性の疑いのあるもの)に指定されています。


 4)p-ジクロロベンゼン(p-dichlorobenzene C6H4Cl2)

  ジクロロベンゼンには塩素の位置によって、
  o-(オルト)、m-(メタ)、p-(パラ)の3つの異性体があります。
  p-ジクロロベンゼンは、特有の芳香臭をもつ無色の結晶で、昇華性があり、
  衣料用防虫剤、トイレの防臭剤などに広く用いられています。
  他に、有機合成の中間体としての用途もあります。

  人体の中毒症状としては、頭痛、めまい、アルコール中毒様の興奮、全身倦怠感、
  眼・鼻・のどの刺激、腎炎などが、皮膚症状としては熱感などの軽度の刺激作用があります。

  身近で使用されるため(防虫剤をおいた室内の空気中濃度は1000ppbを超える場合がある)
  人の体脂肪から平均2.3ppm(最大11.7ppm)と、
  魚類からの検出例の10〜1000倍もの濃度が検出された例があります。


 5)イソキサチオン(isoxathion)

  化学名:ο,ο-diethyl ο-(5-phenyl-3-isoxazolyl) thiophosphate

  商品名:カルホス、カルホスベイトなど

  人畜毒性:劇物(2%以下は普通物)。魚毒性:B類。

  有機リン系殺虫剤の一つで、ミカンのカイガラムシや野菜のネキリムシ、
  タネバエなどに適用されるほか、ゴルフ場でも使用されています。


 6)ダイアジノン(diazinon)

  化学名:ο,ο-diethyl ο-2-isopropyl-6-methylpyrimidin-4-yl thiophosphate

  商品名:ダイアジノン、エキソジノンなど

  人畜毒性:劇物(1%以下は普通物)。魚毒性:Bs類。ADI:0.002mg/kg/day。

  MEPとならんで有機リン系殺虫剤の中でも最も使用量の多いものの一つで、
  水田、畑地、果樹園、庭園、ゴルフ場などで広く用いられています。

  土壌への吸着性が低く、比較的水系に流出しやすい農薬と考えられます。
  河川水(水道原水を含む)でppb、水道水でもpptのオーダーの検出例があり、
  魚介類や雨水、大気中からも検出されています。

  動物実験では催奇形性が認められているほか、
  魚の骨曲がりを誘発しやすいことも知られています。


 7)フェニトロチオン(fenitrothion:MEP)

  化学名:ο,ο-dimethyl ο-4-nitro-m-tolyl-6-methylpyrimidin-4-yl thiophosphate

  商品名:スミチオン、ガットサイドSなど

  人畜毒性:普通物。魚毒性:B類。ADI:0.005mg/kg/day。

  有機リン系殺虫剤の中でも最も生産・使用量の多いものの一つで、
  農地、庭園、ゴルフ場などで広く用いられています。
  松枯れ対策などの空中散布にも使用され、
  家庭用殺虫剤の中にもMEPを含むものがあります。

  農耕地だけでなく都市部の公園、街路樹、家庭でも使用されるため、
  さまざまな大気や水系の汚染が報告されています。
  河川水(水道原水を含む)からの検出例は10−1〜101ppbのオーダーで、
  水生生物はもとより、小麦粉やパンなどの加工製品からの検出例もあります。


 8)イソプロチオラン(isoprothiolane)

  化学名:diisopropyl 1,3-dithiolan-2-ylidenemalonate

  商品名:フジワン、グラステン(フルトラニルとの複合剤)など

  人畜毒性:普通物。魚毒性:B類。

  ジチオラン系の殺菌剤で、水稲のイモチ病に適用されるほか、
  ゴルフ場でもよく使用されています。

  水田で多量に使用されるため、農地河川の水質や底質から検出されることが多く、
  ppm オーダーでの検出例も報告されています。
  環境中で比較的安定で、農薬の使用されない冬季にも検出されています。
  また土壌に吸着されやすく、土壌中に長く残留する傾向があります。
  水田土壌中でのイソプロチオランの半減期は約 100日との報告があります。


 9)オキシン銅(oxine-copper) 有機銅ともいう。

  化学名:copper bis(8-quinolinolate) 商品名:オキシンドー、キノンドーなど。

  人畜毒性:普通物。魚毒性:B類。

  銅殺菌剤で、リンゴやナシなどの果樹や茶の病害に適用されるほか、
  ゴルフ場でも使用されています。

  北海道で、ゴルフ場から有機銅剤が流出し、
  下流の養魚場で魚類が死亡した事故例があります。


 10)クロロタロニル(chlorothalonil:TPN)

  化学名:tetrachloroisophthalonitrile

  商品名:ダコニールなど

  人畜毒性:普通物。魚毒性:C類。ADI:0.03mg/kg/day。

  有機塩素系の殺菌剤で、畑地や果樹園、ゴルフ場などで使用されています。

  人体中毒症状としては、皮膚のかぶれ、気管支喘息様発作、眼の結膜炎などがあります。
  また、アメリカ科学アカデミーは、TPNを発ガンの危険度の高い農薬として挙げています。


 11)プロピザミド(propyzamide)

  化学名:3,5-dichloro-N-(1,1-dimethyl-2-propynyl)benzamide

  商品名:カーブ

  人畜毒性:普通物。魚毒性:A類。

  酸アミド系の除草剤で、ゴルフ場などの芝地や野菜(レタス)畑で使用されています。

  アメリカの研究では、動物実験で発ガン性が認められています。


 12)EPN

  化学名:ο-ethyl ο-4-nitrophenyl phenylthiophosphonate

  人畜毒性:毒物(1.5%以下は劇物)。魚毒性:Bs類。

  有機リン系殺虫剤で、稲のニカメイチュウなどや野菜のアブラムシなどに適用されます。

  従来、パラチオン、メチルパラチオン、メチルジメトン、
  EPNの4種の殺虫剤を一括して「有機リン」という項目名で環境基準
  (検出されないこと。検出限界 0.1��/l)が定められていましたが、
  公共用水域におけるこのレベルでの検出が過去20年間にわたりみられないこと等の理由により
  環境基準から削除され、現在も生産・使用がなされているEPNのみについて、
  要監視項目として指針値(0.006��/l以下)が示されました。


 13)ジクロルボス(dichlorvos:DDVP)

  化学名:2,2-dichlorovinyl dimethyl phospate

  商品名:ホスビット、デス、バポナ、バルサンなど

  人畜毒性:劇物。魚毒性:B類。ADI:0.004mg/kg/day。

  有機リン系の殺虫剤で、野菜畑や果樹園などでの使用のほか、
  温室や貯穀倉庫の燻蒸などに用いられ、
  一般家庭でもダニ退治用の燻煙剤などとして使用されています。

  蒸気圧が高いため揮散によって失われやすく
  (残効性が小さいことを利点としてクワの害虫にも適用される)、
  また水中でも容易に加水分解されます。
  同じ有機リン殺虫剤であるDEP(トリクロルホン。商品名:ディプテレックスなど)
  中の共存物として発見された薬剤で、
  環境中でもDEPの分解代謝物としてDDVPが生成する可能性があります。

  大腸菌やサルモネラ菌に対して変異原性があり、
  動物実験で発ガン性や肝臓障害が認められています。
  USEPA(米国環境保護庁)はDDVPがガンや肝臓障害、
  神経障害を起こす恐れがあるとして、使用規制を提案しています。


 14)フェノブカルブ(fenobucarb:BPMC)

  化学名:2-s-butylphenyl methylcarbamate

  商品名:バッサ

  人畜毒性:劇物(2%以下は普通物)。魚毒性:Bs類。

  カーバメート系(炭素、窒素、水素、酸素からなるカーバメート結合をもつ物質系)
  の殺虫剤で、稲や麦のウンカ、ツマグロヨコバイなどに適用され、
  空中散布も行われています。

  人体の中毒症状は有機リン系農薬の毒性と類似しています。
  変異原性は認められていませんが、動物の胃の中で亜硝酸と反応してできる
  BPMC−ニトロソ体は大腸菌で変異原性ありとされており、発ガン性も疑われています。


 15)イプロベンホス(iprofenfos:IBP)

  化学名:S-benzyl diisopropyl thiophosphate 商品名:キタジンPなど

  人畜毒性:普通物。魚毒性:B類。

  有機リン系の殺菌剤で、稲のイモチ病などに適用されます。

  水田で広く使用されるため、大気や水系を汚染することが知られています。
  河川水では最高8.9ppb、シジミで最高1.1ppm、水道水からも最高10.7pptの検出例があり、
  米ぬかや白米からもppbのオーダーで検出されています。

  比較的分解されにくく、土壌中のIBPの半減期は80日以上という報告があります。


 16)クロルニトロフェン(chlornitrofen:CNP)

  化学名:4-nitrophenyl 2,4,6-trichlorophenyl ether 商品名:MO、エムオンなど

  人畜毒性:普通物。魚毒性:A類。

  ジフェニルエーテル系(2個のベンゼン環が酸素で結合している物質系)の除草剤で、
  有機塩素系の化合物でもあります。

  水田の初期除草剤として多用されたため、水系汚染が問題になりました。
  5月から7月に高い値を示すことが多く、河川水からは最高8.3ppb、
  河川水を水源とする水道水からも最高564pptが検出された例があるほか、
  底質や魚介類への蓄積も認められています。

  CNP自身の毒性は比較的低いものですが、不純物としてダイオキシン類や
  PCDF(ポリ塩素化ジベンゾフラン:PCBの誘導体でPCBよりも毒性が強い)
  を含むこと、および環境中でより毒性の強いNIP(nitrofen)
  に変化し得ることなどから、影響が懸念されていました。
  そして、平成5年1月に新潟平野のCNP検出濃度と胆嚢ガン発生率に
  相関関係を認めた疫学調査結果が発表されたことを契機として
  厚生省は安全性の再評価を行い、その結果、平成6年3月に、
  従来 0.002mg/kg/day に設定されていたCNPのADIを取り消し、
  ガンとの因果関係が明らかになるまではADIを設定しないこととしました。
  これに伴い、水道水質の監視項目としての指針値は従来の 0.005�唹焚爾紡悗┐�
  (現在の分析技術上の定量下限である)0.0001��/l以下とする暫定指針値が定められ、
  公共用水域の要監視項目としても、項目は残されましたが指針値は削除されました。

  なお、農水省は都道府県にCNP使用自粛の指導を求め、
  製造メーカーも製品の回収と製造・販売の自粛を決めていることから、
  CNPは事実上の使用中止に向かうものと考えられます。


 17)トルエン(toluene)

  メチルベンゼン(methylbenzene)、フェニルメタン(phenylmethane)ともいう。

  ベンゼン環の1個の水素がメチル基(CH3-)で置換された化合物です。
  常温常圧で無色透明の水より軽い液体で、芳香臭があります。
  引火性があり、海洋汚染防止法において危険物に指定されています。

  代表的な有機溶剤で、シンナー、接着剤、塗料、印刷用インキを通じて
  ほとんどの溶剤製品に最も高頻度かつ高濃度に含まれています。
  染料、火薬、合成繊維などの原料にも用いられるほか、
  動車用無鉛ガソリンの中にはアンチノック剤として最高数十%が含まれていることがあり、
  自動車排ガス中にも含まれています。

  蒸気暴露による人体影響は中枢神経の抑制作用が主で、
  高濃度暴露では強い麻酔作用があります。
  反復暴露では全身倦怠感、健忘症、四肢の知覚異常などの症状が現れ、
  脳波異常を生じた症例も報告されています。いわゆるシンナー遊びの原因物質です。

  水系への流入経路としては、溶剤製品を使用する事業場等の排水の他に、
  自動車排ガスなどとして大気中に排出されたものが雨とともに流入することが考えられます。


 18)キシレン(xylene)

  ジメチルベンゼン(dimethylbenzene)ともいう。

  ベンゼン環の2個の水素がメチル基で置換された化合物で、
  メチル基の位置により o-(オルト)、m-(メタ)、p-(パラ)の3つの異性体があります。
  通常の工業製品は3つの異性体の混合物です。

  トルエンと並ぶ代表的な有機溶剤で、
  各種の溶剤製品や自動車ガソリン中にトルエンとともに使用されるほか、
  キシレン自体は染料、有機顔料、可塑剤、農薬、医薬品などの重要な合成原料です。

  性状、毒性などはトルエンとほぼ同様で、やはり引火性の危険物に指定されています。


 19)フタル酸ジエチルヘキシル(di-2-ethylhexylphthalate:DEHP)

  フタル酸ジオクチル(dioctyl phthalate:DOP)ともいう。

  フタル酸エステル(phthalic ester)にはモノエステルとジエステルがあり、
  特にジエステル類がプラスチックの可塑剤などに大量に使用されています。
  フタル酸ジエチルヘキシルはジエステル類の中でも最もよく使用されているもので、
  塩化ビニル、アクリル樹脂、合成ゴムなどの可塑剤として、
  また被覆加工用、電気絶縁用などとしても使用されています。

  低揮発性で経皮吸収もないため、
  産業現場における毒物としてはきわめて安全な部類に属しますが、
  ベトナム戦争で輸血を受けた兵士が肺ショックを起こした原因として、
  塩化ビニル製の血液バッグから溶出したフタル酸エステルが疑われたのがきっかけとなって、
  塩化ビニルの広範な利用に伴う環境汚染が問題として取り上げられるようになりました。

  体内に摂取されると速やかに吸収されますが、5〜7日のうちに80%が糞尿中に排泄され、
  生物体内への蓄積性は比較的低いと考えられます。
  しかし、動物実験では大量投与による肝・腎の変性や繁殖能力の低下がみられ、
  催奇形性、変異原性も報告されています。
  また、毒性はフタル酸ジエチルヘキシルよりもその代謝中間産物である
  モノエステル(フタル酸モノエチルヘキシル)の方が強いことが認められています。

  人間が飲料水、食品、空気を通じて摂取し得る量を考慮すると、
  通常の使用では安全な物質と考えられますが、
  大気や排水を通じてあらゆる水の中に入っているといわれ、
  食物連鎖を通じた影響も考えられるので、十分な監視が必要とされています。

  河川水からの検出例は、数ppb以下程度です。


 20)ホウ素(boron:B)

  単体のホウ素は黒色の固い固体ですが、さまざまな化合物の形で自然界に広く存在します。

  ホウ酸(H3BO3)、ホウ砂(Na2B4O7・10H2O)などとして医薬用、
  工業用などに用いられるほか、シリコン半導体のドーピング剤としての用途もあります。

  動植物の必須元素の一つで毒性は弱く、大量に摂取した場合は中毒を起こしますが、
  通常は人間や家畜に対する毒性が問題になることはありません。
  ホウ素が問題になるのはかんがい水の場合で、
  一般に穀物などでは微量のホウ素は生育に好影響がありますが、
  数��/l以上になると発育が阻害されるので、
  農業利水が行われている水域では注意が必要な項目です。

  自然水中の濃度は海水で4〜5��/l、淡水で普通0.2〜1.2��/lのレベルで、
  異常な値が検出されたときは、鉱泉や原子炉の二次冷却水などの影響を疑う必要があります。


 21)フッ素(fluorine:F)

  フッ素は常温・常圧では淡黄色で特異臭のある気体です。
  天然に単体で存在することはありませんが、
  地殻における存在度は625mg/kgと13番目に多い元素で、
  種々の元素と結合した形で広く存在し、
  土壌、水、空気、生物体内のほとんどすべてに含まれています。

  単体(フッ素ガス)およびフッ化ナトリウム、フッ化水素酸などの化合物として、
  原料用(フロン、フッ素樹脂、木材防腐剤、殺鼠剤など)および
  半導体のエッチング剤や金属洗浄剤などに用いられます。

  自然水中の濃度は、海水で 1.3〜1.4��/l、通常の河川水で 0.2��/l程度ですが、
  温泉水や火山地帯の地下水にはかなり高濃度のフッ素が含まれていることがあります。

  フッ素ガスは強い腐食性を持つ刺激物で猛毒ですが、フッ素による急性中毒は事故、
  自殺などでフッ化物を大量に摂取した場合に限られます。
  致死量は2.5〜5g/人とされています。

  慢性中毒としては、1.5��/l以上の濃度の水を飲料水として長期間摂取すると
  斑状歯(歯のほうろう質に白墨様の斑点が生じ、色素が沈着して暗褐色になる病気)が生じ、
  さらに摂取量が多いと骨硬化症その他の障害が起こるとされています。
  しかし、1��/l以下程度の濃度であれば害はなく、
  むしろ虫歯の予防に効果があるとされたため、
  水道水中にフッ素を添加する試みが行われたこともあります。

  水中への人為的な供給源としては、アルミニウム精錬業、
  リン酸肥料製造業、ガラス製造業、窯業などから排水として、
  あるいは大気中に排出されたものが雨に溶けて流入するものがあります。


 22)ニッケル(nickel:Ni)

  常温で銀白色の金属で、空気や湿気に対して鉄よりも安定ですが、
  微粉末は発火性があります。

  延展性に富み、貨幣、家具、機器、電池などの材料に、
  また合金としてステンレス鋼やニッケル鋼、電熱線などに用いられます。
  メッキにも使用され、触媒としての用途もあります。

  海水中には2��/l前後含まれていますが、通常の淡水中の濃度はppbのオーダーです。

  人為的な供給源としては、メッキ工場排水や鉱山排水などから、
  シアン化合物、クロム、銅、亜鉛などとともに排出されることがあります。

  ニッケルは重金属類の一つですが、体内での吸収率が低く健康障害が発生した例もないため、
  従来はあまり重要視されず、水産用水基準にとりあげられているほか、
  一部の自治体で横出し基準として排水基準が設定されている程度でしたが、
  要監視項目とされたことによって排水規制も強化されていくものと考えられます。


 23)モリブデン(molybdenum:Mo)

  常温で安定な銀白色の金属で、単体として特殊鋼などの合金材料に用いられるほか、
  化合物として顔料や触媒などの用途もあります。

  海水中には10μg/l、河川水にも5〜30μg/l程度含まれています。

  重金属類の一つで、高濃度のモリブデンを含む牧草を食べている家畜に
  中毒(タート病:症状は下痢や体重減少)が起こることが知られていますが、
  同時に生体の必須元素でもあります。
  水質汚染についてはニッケルと同様に従来はあまり重要視されていませんでしたが、
  ニッケルよりも吸収されやすく、人の血液中にも数μg/lが含まれています。


 24)アンチモン(antimony:Sb)

  常温で銀白色の金属で、単体としては合金や半導体材料に、
  化合物として樹脂や繊維の難燃剤、顔料、ガラス清澄剤、触媒に用いられています。

  人体にとって何ら益なくもっぱら有害な重金属で、
  水質・土壌汚染に関して注意が必要な物質です。

  その毒性はヒ素と類似のもので、体内に蓄積されやすく、
  急性的にも慢性的にも中毒を起こします。

  滋賀県では昭和43年にアンチモン精錬工場周辺の山林のマツが枯死し、
  養蚕被害や周辺住民に皮膚障害が発生した事例があります。
  その後、建屋の密閉化や排水処理の強化等の対策が講じられ、
  大気粉塵や河川水の汚染は改善されましたが、
  地下水からは平成3年3月までアンチモンが検出され続けました。
  同県では、横出し基準 (0.05��/l以下)を設けて排水中のアンチモンを規制しています。

  自然水中の濃度はわずか(海水で約 0.2μg/l、淡水も1μg/l以下)ですが、
  工業用には活字や軸受け合金として、また冶金用、
  塗料、ガラス工業などに広く用いられているので、
  それらの工場排水や鉱山排水中には多量に含まれている可能性があります。


 25)硝酸性窒素および亜硝酸性窒素(富栄養化関連項目参照)


「平成8年2月 水質調査の基礎知識(近畿地方整備局近畿技術事務所)より抜粋」