2.生活環境項目「平成8年2月 水質調査の基礎知識(近畿地方整備局近畿技術事務所)より抜粋」


pH BOD COD SS DO 大腸菌群数 総窒素 総リン n−ヘキサン抽出物質(海域)

                  (9項目)


 水質汚濁に係る環境基準のうち、生活環境の保全に関する環境基準の定められている項目で、
 最も基本的な水質項目です。


 1)pH(ピーエイチまたはペーハー:水素イオン濃度指数)
  水の酸性とアルカリ性の度合を示す指標で、単位はありません。
  中性の水はpH7で、7より小さいものは酸性、7より大きいものはアルカリ性です。
  ただし、厳密には水温によって変化するので、
  pHの測定値には測定時の水温も付記すべきです。

  通常の淡水のpHは7前後ですが、表流水はどちらかというとアルカリ側が多く、
  地下水は土壌中の生物作用によって生じた二酸化炭素のために
  酸性側のものが多くみられます。
  また湖沼水は、夏季の成層期には、
  表層は植物プランクトンの光合成によって
  二酸化炭素が消費されるためにアルカリ側に傾き、
  底層はプランクトンの遺骸の分解に伴って
  二酸化炭素や有機酸が生成するため酸性側に傾きます。

  pHは、水中の化学的作用や生物作用に大きな影響を与えます。
  強い酸性やアルカリ性の水の中では普通の微生物は活動できません。
  アルカリ側では金属の水酸化物が生成して
  透明度が下がったり底泥の堆積量が増えたりしやすく、
  酸性側では底質中の重金属類が溶出しやすくなります。

  水道用水としては、pH8.5以上では塩素による殺菌力が低下し、
  6.5以下では浄水処理過程の凝集効果が低下するといわれています。
  反対にpH6.5〜8.5は、水道管や給水装置などの
  腐食防止の点からも望ましい範囲といえます。

  農業用水としては、水稲の生育に適したpHは6.0から7.5の範囲とされています。
  pHが低すぎると根の発育阻害や塩基の流亡による土壌の老朽化を招き、
  高すぎると鉄欠乏による葉の黄化現象などを引き起こします。

  水産用水としては、河川ではpH6.7〜7.5、
  海域ではpH7.8〜8.4の範囲が生物の生育に適しているとされています。

  pH5以下を示す水は異常と考えるべきですが、湿原地帯の水や、
  温泉地帯または硫化物を鉱石とする鉱山地帯の水にはそのような酸性水がみられます。
  前者は植物の遺骸の不完全な分解によって生ずる有機腐植酸によるもので
  pH3.5程度までですが、後者は硫酸や塩酸などの無機強酸によるもので
  pH3以下になることもあります。

  普通の陸水でpH8を超えるものは少なく、
  特にRpHが8を超す水は特殊な条件−たとえば、
  海水の混入 (海水のpHは8前後)、
  塩基性温泉水(pH10近いものもある)の混入、流域の地質(石灰岩地帯など)、
  コンクリートの溶出など人為的原因−があると考えられます。
  なお、富栄養湖の表層水は夏季にpH8を超えることが珍しくありませんが、
  RpHはもっと低くなります。

 RpH(reserved pH)

  きれいな空気で十分通気した後のpH値をいいます。

  表流水では普通のpHとあまり変わりませんが、
  地下水や夏季の湖沼水ではpHとRpHの差が大きいことがあります。
  これは主に二酸化炭素が通気によって出入りするためです。


 2)BOD(biochemical oxygen demand:生物化学的酸素要求量
 水中の比較的分解されやすい有機物が、溶存酸素の存在のもとに
 好気性微生物によって酸化分解される時に消費される酸素の量で、
 通常20℃で5日間、暗所で培養したときの消費量(BOD)を指します。

 もともと、排水を河川に放流したときに河川中で
 どのぐらいの酸素が消費されるかを知るために
 イギリスで考案された指標で、5日間はイギリスの河川の
 最大流達時間(水源から海に達するまでの時間)に相当します。

 水中で酸素を消費する物質は主に有機物ですから、
 有機汚濁の指標として古くから用いられていますが、
 微生物によって分解されにくい有機物や、毒物による汚染を伴う場合は測定できません。
 逆にアンモニアや亜硝酸などは、無機物ですが微生物によって酸化されるので、
 測定値に含まれてくる場合があります。
 特に下水の二次処理水などでは、易分解性の有機物はほとんど分解されつくしており、
 アンモニアや亜硝酸を硝酸に酸化する細菌(硝化菌)が繁殖していることが多いので、
 必ずしも有機物の指標とは言えなくなります。
 (硝化作用を抑制した状態でBODを測定するためには、
  試料にN−アリルチオ尿素(N-allylthiourea:ATU)を添加します。
 この場合のBODをATU−BODといいます。)

 BODが高いということは溶存酸素が欠乏しやすいことを意味し、
 BOD10/l以上では悪臭の発生など嫌気性分解に伴う障害が現れ始めます。

 上水用水源としては、BOD3/lを超えると
 一般の浄水処理方法では処理が困難になるとされています。

 水産用水としては、ヤマメ、イワナなどの清水性魚類に対してはBOD2/l以下、
 サケ、マス、アユなどは3/l以下、
 比較的汚濁に強いコイ、フナ類でも5/l以下が適当とされています。

 人為的汚染のない河川のBODはおおむね1/l以下です。


図3−1.BOD測定における酸素要求量の内容

 *IOD(immediate oxygen demand 瞬時の酸素要求量)

  始めの15分間の酸素消費量。
  微生物反応によらずに直接酸素を消費する不安定な還元性物質
  (硫化物、亜硫酸塩など)を含む水ではBODと区別します。

 *CBOD

  炭素系有機物(分解されやすい)の分解によるBOD。


 *NBOD

  窒素系有機物(分解されにくい)の分解および硝化によるBOD。


 *UOD(ultimate oxygen demand 究極酸素要求量)

  微生物による酸素消費の最終量。
  この段階まで酸化が完了するためには約100日を要します。


 *TOD(total oxygen demand 全酸素要求量

  水中のすべての物質を完全に酸化分解した場合の酸素消費量。
  生物化学的には酸化されない物質の分も含みます。



 3)COD(chemical oxygen demand:化学的酸素要求量

  水中の被酸化性物質(主として有機物)を、過マンガン酸カリウム(KMnO)または
  重クロム酸カリウム(KCrO)などの酸化剤で酸化する際に消費される酸化剤の量を
  酸素量に換算したもので、BODとともに有機汚濁の指標としてよく用いられます。

  単にCODという場合は、わが国では通常、
  硫酸酸性で過マンガン酸カリウムによって沸騰水浴中(100℃)で
  30分間反応させた場合の消費量(CODMn)を指します。

  また、酸素量に換算する前の過マンガン酸カリウム消費量
  そのまま指標とする場合もあり、特に上水関係では直火・5分間煮沸による
  過マンガン酸カリウム消費量がよく使われます。
  反応条件が同じであれば、両者の関係は次式のようになります。

      CODMn(/l)≒KMnO消費量(/l)×0.25

  重クロム酸カリウムは酸化力が強く、有機物の大部分は 80〜100%酸化されるため、
  酸化剤として重クロム酸カリウムを用いた場合(CODCr)の測定値は
  CODMnに比べて大きく、TODの意味あいに近いものとなります。
  諸外国では、CODCrの方が主流です。

  環境基準は河川についてはBODで、
  湖沼および海域についてはCODで設定されています。
  これは、河川は流下時間が短くその間に
  川の水の中の酸素を消費するような生物によって
  酸化され易い有機物を問題にすればよいのに対し、
  湖沼は滞留時間が長く有機物が溶存酸素を消費する時間は5日間以上になるので、
  有機物の全量を問題にしなければならないという立場にたっているのと、
  湖沼には光合成によって有機物を生成し、
  溶存酸素の生成と消費の両方を行う藻類が大量に繁殖しているため
  BODの測定値の意味が不明確になりがちなためです。

  海域の環境基準(B類型)のうち、
  工業用水およびノリ養殖場として利用されている水域のCODは、
  アルカリ性での過マンガン酸カリウムによる方法(CODOH)が採用されています。

  人為的汚濁のない水域のCODはおおむね1/l以下です。

  利水目的によるCODは、水道用水源としては3/l以下、
  水産用水としてはサケ、マスなどには3/l以下、コイ、フナなどには5/l以下、
  農業用水としては溶存酸素の不足による根ぐされ病の防止の点から
  6/l以下が望ましいとされています。


図3−2.BODとCODの関係


  CODは有機汚濁の指標としてBODと同じような取り扱われ方をしますが、
  微生物によっては分解されないが酸化剤によっては分解される物質もあれば、
  逆に酸化剤では分解されにくいが微生物には分解される物質もあるため、
  CODとBODの間に決まった関係はありません。
  (CODCrの場合はほぼ常にBODより大きいといえます)

  図3−2で、2つの輪の大きさや重なった部分の大きさは
  対象とする水によってまちまちです。
  ただ、同じ排水や同じ水域の水であれば、ある程度の相関関係はあるので、
  CODからBOD(またはその逆)を推 図3−2.
  BODとCODの関係定することも可能です。

  たとえば都市下水の場合、生下水ではBODの方が高く、
  その二次処理水ではCODの方が高い傾向があります。


 4)SS(suspended solid:浮遊物質または懸濁物質

  粒状物質(particulate matter:PM)、セストン(seston)などともいう。

  水中に懸濁している不溶解性の粒子状物質のことで、
  粘土鉱物に由来する微粒子や、動植物プランクトンおよびその死骸、
  下水・工場排水などに由来する有機物や金属の沈澱などが含まれます。
  一般に、清澄な河川では粘土分が主体ですが、汚濁が進んだ河川では有機物の比率が高く、
  湖沼や海域ではプランクトンとその遺骸が多くなります。

  SSが多いと水の濁りや透明度などの外観が悪くなるほか、

   ・魚類のえらを塞いで死亡させる

   ・光の透過を妨げて水中の植物の光合成を阻害する

   ・沈澱堆積して底生生物を埋没して死亡または枯死させる

   ・農業用水の場合は土壌の透水性を低下させて作物の生育を阻害する

   ・有機性粒子は沈澱後腐敗分解して悪臭を発生したり作物の根を損傷する

  などの影響があります。

  通常の河川のSSは25〜100/l以下ですが、
  降雨後の濁水の流出時には数百/l以上になることもあります。
  たとえば、造成工事に伴って流出する濁水のSSは 500〜5000/l程度といわれています。

  湖沼は、流れが緩やかで沈澱しやすいため、河川に比べてSSは少なく、
  一般に15/l以下程度、貧栄養湖では1/l以下です。

  農業用水としては、土壌の透水性の保持の点からSS100/l以下、
  水産用水としては、河川については25/l以下、
  湖沼については、サケ、マス、アユなどには1.4/l以下、
  コイ、フナなどには3/l以下が適当とされています。

  ◎溶解性と粒子性

  溶解性と粒子性の区別はそれほど厳密なものではなく、
  一般に孔径0.45〜1μmのフィルターを通過する成分を溶解性(または溶存態)、
  通過しない成分を粒子性(または懸濁態)とします。
  また、2侈椶里佞襪い鯆眠瓩靴覆い發里蓮
  粗大物として水質分析の対象からは除外するのが普通です。

  BOD、CODをはじめとする他のほとんどの水質成分も、
  溶解性と粒子性に分けることができます。
  この場合、項目名の前に、溶解性のものには頭文字D(dissolved)
  あるいはS(soluble)、粒子性のものにはP(particulate)をつけて区別します。

  例  D・BOD:溶解性BOD

     D・COD:溶解性COD

     POC:粒子性有機態炭素(particulate organic carbon)


図3−3.溶解性と粒子性


 5)DO(dissolved oxygen:溶存酸素

  水中に溶解している酸素ガス(O)のことで、河川や海域での自浄作用や、
  魚類をはじめとする水生生物の生活には不可欠なものです。
  酸素の溶解度は水温、気圧、塩分などに影響されますが、
  DOは、水が清澄なほどその条件における飽和量に近い量が含まれます。
  単位は通常/lを使いますが、同じ濃度であっても
  条件(特に水温)によって意味が違うので、
  飽和溶存酸素量に対する百分率(%)で表すこともよく行われます。
  (20℃の純水の飽和溶存酸素量は8.84/l)

  海水は塩分濃度が高いために、河川や湖沼に比べてDOはいくぶん低くなります。

  一般に、魚介類が生存するためにはDO3/l以上が必要であり、
  良好な状態を保つためには5/l以上であることが望ましいとされています。
  また、好気性微生物が活発に活動するためにはDO2/l以上が必要であり、
  それ以下になると嫌気性分解が起こって、
  硫化水素やメルカプタンなどの悪臭物質が発生したりします。

  農業用水としては、DO5/l以下では根ぐされなどの障害が生じます。


 6)大腸菌群数(coliform group bacteria)

  水中に存在する多種多様な細菌をすべて分別して検出することはきわめて困難なので、
  通常の水質試験では、大腸菌群と一般細菌に分けて分析します。

  大腸菌群とは、大腸菌(Escherichia coli)および大腸菌と
  きわめてよく似た性質を持つ細菌の総称です。
  大腸菌群は一般に人畜の腸管内に常時生息し、
  健康な人間の糞便1g中に10億〜100億存在するといわれています。
  そのため、微量のし尿によって水が汚染されてもきわめて鋭敏に検出され、
  また、その数に変動をきたします。
  大腸菌群の検出は容易かつ確実なので、し尿汚染の指標として広く用いられています。

  大腸菌群自身は普通、病原性はなく、大腸菌群が検出されたからといって
  直ちにその水が危険であるとはいえません。
  しかし、大腸菌群が検出されることは、その水はし尿による汚染を受けた可能性が高く、
  したがって赤痢菌やサルモネラ菌などの病原性細菌によって
  汚染されている危険があるということを示すものです。

  大腸菌群数は、検水1ml中の個数(正確には培養後の集落数)または、
  検水100ml中の最確数(most probablenumber:MPN)で表します。
  環境水などの比較的低濃度の試料ではMPN法がよく用いられます。
  ただし、現行の大腸菌群測定法ではし尿由来の大腸菌群以外に
  種々の土壌細菌も測定されてしまうため、
  人為汚染の考えられないような水域でも
  しばしば多量の大腸菌群が測定されるなどの問題点があります。
  そこで、これに変わる指標として糞便性大腸菌群
  (通常の大腸菌群数試験が約36℃で培養するのに対し約44.5℃で培養するなど、
   試験方法が若干異なる)なども用いられるようになってきました。

  水中に許容される大腸菌群数は、利水目的によって異なりますが、

  水道水質基準(水道法)     検出されないこと

  水産用水基準(日本水産資源保護協会)   1000個/100ml 以下

         (生食用カキの養殖場については 70個/100ml 以下)

  水浴場の判定基準(環境庁)  糞便性大腸菌群として、

                    100個/100ml 以下 :快適

                    100〜1000個/100ml:適

                    1000個/100ml 以上 :不適

  などとされています。


 7)総窒素(total nitrogen:T−N)富栄養化関連項目


 8)総リン(total phosphorus:T−P)富栄養化関連項目


 9)n−ヘキサン抽出物質(normalhexane extracts)排水基準項目



「平成8年2月 水質調査の基礎知識(近畿地方整備局近畿技術事務所)より抜粋」