海象観測 概説 1)我が国の海岸の概況 日本の国土は、本州、北海道、四国及び九州の4大島とその周辺の多数の島々からなっているため、海岸線の形状が極めて複雑であり、海岸線の総延長は約34,800kmと国土の広さに比して著しく長いことが特徴です。また、この海岸線に沿った地域では、人口の集中や資産の増大が急速に進み、我が国の経済活動の中枢となっています。 一方、我が国は、地震、台風、低気圧、冬期風浪などの厳しい自然条件にさらされており、過去には、三陸沖地震、伊勢湾台風などによる大惨事を経験するなど、津波、高潮、波浪、海岸侵食により、幾度となく甚大な被害を受けてきました。 2)気象・海象観測の目的 絶えず自然の脅威にさらされている地域における被害を未然に防止し、国土の保全と民生の安定を図るため、昭和31年の海岸法制定以降、本格的に海岸堤防など海岸保全施設の新設、改良を行ってきました。 平成11年には海岸法が改正され、「防護」「環境」「利用」の調和した総合的な海岸の保全を進めています。 海岸の保全にあたっては、海の現象は複雑で未知の部分が多いことから、海岸構造物の設計や災害時の対応などの基礎資料として、国土交通省河川局では、各地の所管観測所で気象・海象観測を行っています。 3)主な観測項目 (1) 風 波浪や高潮の発生を支配する重要な要素で、海岸構造物の設計や安全な工事などに必要な資料として、観測しています。一般的には、海面上10m付近の値を観測します。 (2)波浪 最も基本的な海岸の状況として、風によって発達した波やうねりなど、来襲する波浪の特性を知るために、波高、波向、周期を観測しています。 (3)潮位 天体による潮汐(天文潮)のほか、風の吹き寄せ、気圧の変動、長周期の波浪などによって変化している海水面の上下を観測し、海岸構造物の設計や工事の基準面の設定などに活用しています。 海象観測の意味 風速:観測時刻前10分間の平均をもってその値としています。 風向:風速と同時観測とし、観測時刻前10分間の平均を16方位で表しています。 波高:毎時観測を原則として、100波以上(20分間以上)観測し、波高の観測記録中、波高の最も大きいものから順番に全波数1/3を取り出して、平均した値(「有義波高」といいます)で表しています。 波向:毎時観測を原則として、100波以上(20分間以上)観測した平均を真北から右回りの角度で表しています。 周期:有義波高に対応した値としています。 |