7.地質環境その他項目
           「平成8年2月 水質調査の基礎知識(近畿地方整備局近畿技術事務所)より抜粋」


濁度 導電率 酸化還元電位 塩素イオン 蒸発残留物 硬度 カルシウム マグネシウム アルカリ度
酸度 MBAS 硫酸イオン 硫化物イオン ナトリウム カリウム アルミニウム スズ 有機スズ
ヨウ素消費量 一般細菌 残留塩素 トリハロメタン 揮発性有機化合物 TOX PCP クロルデン
四塩化炭素抽出物質 コプロスタノール アクリルアミド 1,4-ジオキサン 毒性試験
                                      (31項目)


  人為的な汚染以外でも、流域の地質などによってしばしば高濃度に検出される項目や、
  その他現在は特に規制基準は設けられていないものの、一定の有害性が認められ、
  将来問題化する可能性のある項目などを、一括して以下に掲げます。


 1)濁度(turbidity)

  水の濁りの程度を表す指標で、精製水1l中に標準物質(カオリンまたはホルマジン)
  1咾魎泙狆豺腓汎営度の濁りを1度または1/lとします。

  水に食塩や色素を溶かしても透明で濁りはありませんが、
  粘土粒子が水中に浮遊していると濁って見えます。
  すなわち、濁りの原因は粘土粒子やプランクトンなどの不溶解性微粒子で、
  濁度はSSとよく似た指標といえます。
  しかし、SSが同じであっても粒子の種類や大きさによって濁度は異なるため、
  両者の間に常に相関関係があるとは限りません。


 2)導電率(electric conductivity:EC
  電気伝導率、電気伝導度、電導率などともいう

  水が電気を通す能力をいい、面積がそれぞれ1cm
  2つの電極を相対して沈めたときの溶液の抵抗の逆数で表します。
  単位は従来μS/cm(マイクロジーメンス パー センチメートル)が用いられてきましたが、
  国際単位系(SI)と整合させるために、JIS K 0102-1993 では
  mS/m(ミリジーメンス パー メートル)に改められました。
  両者の関係は、

   1μS/cm = 0.1mS/m

  となります。また、古くはSのかわりに(モー;S=1/Ω)という単位が用いられました。

  水温1℃の増加に対して約2%増加するので、一般に25℃のときの値で表示します。

  水中の電解質(イオンになって溶ける塩類)濃度を一括して推定する指標で、
  溶解性物質(DM)とある程度の相関があり、普通、同一水系の水であればpH5〜9の範囲で

   DM(/l) ≒ EC(μS/cm)×0.5〜0.8 = EC(mS/m)×5〜8

  の関係があるといわれています。

  携帯用電気伝導度計で迅速に測定できるので、
  トレーサー試験や、地下水や感潮河川における海水の影響、
  河川の混合状態などを推定したりするのに用いられます。

  わが国の河川の平均的なEC値は11mS/m(110μS/cm)、
  海水では約4500mS/m(45000μS/cm)とされています。


 3)酸化還元電位(oxidation reduction potential:ORP
          または electlode potential on the hydrogen scale:Eh)

  水中に含まれる酸化性物質(DO、第二鉄イオン(Fe3+)など)と
  還元性物質(可溶性有機物、第一鉄イオン (Fe2+)、可溶性硫化物など)の
  平衡によって生ずる電位と基準となる電位の差で、
  ORP計(普通、pH計と一体になっている)によって測定します。単位はmVまたはV。

  水中の酸化還元状態の程度を示す指標で、ORPが+であれば酸化反応が、
  −であれば還元反応が進行することを意味し、ORP値によって水中の物質の存在状態
  (たとえば鉄がFe(OH)として沈澱するかFe2+として溶出するか、
   硫黄がSO2−として存在するかHSが発生するかなど)を推定することができます。
  溶存酸素との関係では、概略的には、好気性状態(DO>0)ではORP>0、
  嫌気性状態(DO=0)ではORP<0といえます。

  ORPは、水中の物質の種類や量と直接結び付けることはできませんが、
  水域の環境をおおむね反映し、また迅速に測定できるので、水質管理指標として有用です。


 4)塩素イオン または塩化物イオン(Cl

  塩素イオンは自然水中で分解されたり沈澱したりすることなく水中にとどまっているので、
  廃水の混入や希釈度の指標となります。

  すなわち、塩素イオンは汚染されていない河川、湖沼、
  地下水でも10〜20/l程度含まれていますが、50/lを越えることはまれで、
  淡水域で 50〜100/l以上の塩素イオンが検出された場合は、
  なんらかの汚染があったと考えられます。
  汚染源としては、し尿(約 5000/l)、下水(50〜200/l)、
  工場排水(業種によってさまざま)などがあり、
  また海岸地帯では海水(約 19000/l)の混入が考えられます。
  逆に海水の塩素イオン濃度が低い場合は、淡水の流入を知ることができます。

  塩素イオンは、それ自体は人体に特に有害なものではなく、
  水道水質基準(200/l以下)も主に味覚の点から定められたものです。
  しかし、かんがい用水の場合は高濃度になると稲などに被害が障害がでますし、
  また工業用水としても、業種によっては水道水質基準よりも厳しい基準値が必要になります。


 5)蒸発残留物(total residue:TRまたは total solid:TS

  水を蒸発乾固したときに残る物質で、水中に存在するすべての物質のうち、
  粗大物(粒径 2舒幣紂砲藩和献スおよび水より沸点の低い物質を除いた
  総量(浮遊物(SS)と溶解性物質(DM)の和)に相当します。( 図3−8 参照)

  蒸発残留物は純粋な水ほど小さく、夾雑物が多い程大きくなるもので、
  水の性状を表す上で最も基本的な項目の一つといえます。

  わが国の河川水の蒸発残留物は通常 200/l程度以下、
  地下水でも 500/l程度までといわれています。

  海水のTRは約 35000/lです。


 6)硬度(hardness)

  一般に、石鹸が泡立ちにくい、豆が柔らかく煮えない等の性質を示す水を硬い水、
  硬水(hard water)とよび、その反対の性質を示す水を軟水(soft water)といいます。
  水の硬さの原因となるのは、自然水中では主にカルシウムイオン(Ca2+
  およびマグネシウムイオン(Mg2+)で、
  硬度はそれらの量をそれに相当する炭酸カルシウム(CaCO3)量に換算して、
  /lまたは1/lを1度として表したものです。

  硬度は、次の5種類に分類されます。

  [1]カルシウム硬度 :カルシウムイオンによる硬度

  [2]マグネシウム硬度:マグネシウムイオンによる硬度

  [3]総硬度 :カルシウム硬度とマグネシウム硬度の和
   (ただし、硬度の原因となる他の金属イオンが多量に存在するときは、
    それらの量も加えるべきです)

  [4]一時硬度(炭酸硬度):重炭酸塩(CaHCO,MgHCO
   として含まれているカルシウムイオン、マグネシウムイオンによる硬度。
   これらは煮沸にすることよって炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムとして沈澱し、
   軟水にかわります。

  [5]永久硬度(非炭酸硬度):硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩、
   ケイ酸塩などとして存在するCa2+,Mg2+による硬度。
   これらは煮沸によって軟化することはできません。

  水中のカルシウム、マグネシウムイオンの成因は、主として地質に由来しますが、
  海水や工場排水、下水などの混入、上水道においては
  施設のコンクリート構造物からの溶出や、水の石灰処理によることもあります。

  硬度は、極端な高濃度でないかぎり健康には害がないため、
  飲料水としては 300度まで許容されていますが、硬度原因物質によっては腎臓、
  胆嚢障害や消化不良などを引き起こすとされています。

  工業用水では、特にボイラー用水について制限が厳しく、
  ボイラー操作圧が高いほど純度の高い水が要求されます。
  一般の冷却水についても、スケールや腐食防止の点から
  総硬度50度以下が望ましいとされています。
  他にも、業種によっては飲料水以上に制限の厳しいものがあります。
  (紙パルプ業、洗濯業、製鋼業など)


 7)カルシウム(calcium:Ca)

  カルシウムイオン(Ca2+)は淡水のもっとも重要な主成分ですが、
  わが国では一般に含有量が少なく、通常 5〜20/l程度です。
  カルシウムイオンを支配する最大の因子は地質であって、
  石灰岩を含む地層あるいは鍾乳洞からの水は多くのカルシウムを含むのに対して、
  火成岩地域からの水はカルシウムが少ないのが普通です。

  わが国ではカルシウムの起源としてはケイ酸塩がもっとも多く、
  炭酸塩がそれにつぎ、硫酸塩に由来するものは少ないと考えられます。
  炭酸カルシウムは二酸化炭素を含む水には容易に溶けるのに対し、
  ケイ酸塩は溶けにくいので、一般に多くのカルシウムが淡水中に見出される場合は、
  炭酸塩の存在あるいは温泉鉱泉の混入を推定することができます。
  また、石灰は水処理剤などとして用いられることが多いので、
  人為的な負荷による場合もあります。


 8)マグネシウム(magnecium:Mg)

  水中のマグネシウムイオン(Mg2+)は、
  カルシウムと同様に主として岩石土壌の風化に起因し、
  淡水では一般に1〜5/l程度含まれています。
  しかし海水中には多量に含まれているので、
  海水の影響の大きいところ(海岸地帯の井戸など)では、
  塩素イオンとともにマグネシウムイオンが多量に混入する可能性があります。
  また、Ca/Mgの比によって流域の地質が推定できる場合があり、
  特にマグネシウム濃度が高いときは、海水の混入の他に、
  マグネシウムの溶出しやすい岩石(緑色片岩など)の存在を検討する必要があります。

  マグネシウムは、葉緑素の主成分であるため、
  富栄養化現象との関連で分析されることがあります。


 9)アルカリ度(alkalinity) 酸消費量ともいう

  試料水に強酸(塩酸、硫酸など)を加えて、所定のpH値に中和するのに必要な酸の量を、
  酸の当量(me/l)または相当する炭酸カルシウムの量(/l)に換算して表したものです。

  自然水中で酸を消費する成分(アルカリ分)は、遊離の水酸化物、炭酸塩、
  重炭酸塩(炭酸水素塩)が主で、他に量的にはわずかですが、
  ケイ酸、リン酸、ホウ酸など弱酸の塩や有機物の陰イオンなども酸を消費します。

  pH値の判定は、pHメーターまたはpH指示薬によって行い、
  通常 pH9、pH8.3、pH5、pH4.8、pH4.3などのアルカリ度が測定されますが、
  JIS K0102にはpH8.3アルカリ度とpH4.8アルカリ度が採用されています。

  pH8.3アルカリ度とpH9アルカリ度は測定値に大差がなく、
  ともに指示薬としてフェノールフタレイン(phenol-phthalein)および
  その混合指示薬を使うことからPアルカリ度と呼ばれます。
  Pアルカリ度は、アルカリ成分のうち水酸イオン(OH)と
  炭酸イオン(CO2−)の量に対応します。

  pH4.3、4.8、5 のアルカリ度はやはり大差がなく、
  指示薬としてMR(methylred)混合指示薬や
  MO(methyl-orange)指示薬を使うことからMアルカリ度と呼ばれます。
  Mアルカリ度は、水中のアルカリ分の総量という意味で総アルカリ度とも呼ばれます。

図3−9.pHと炭酸物質の存在形態


  通常の河川水はほぼ中性(pH7)ですからPアルカリ度は0であり、
  炭酸物質以外のアルカリ分が無視できる場合は、Mアルカリ度から
  重炭酸イオン(HCO)の量を次式によって概算することができます。

    重炭酸イオン(me/l)=Mアルカリ度(me/l)=Mアルカリ度(CaCO/l)/50

    重炭酸イオン(/l)=Mアルカリ度(CaCO/l)×61/50

  水のMアルカリ度が高いということはpHの低下に対する抵抗力(緩衝性)が
  大きいということであり、必ずしもpHが高いことを意味しません。
  Mアルカリ度の低い水(20/l程度以下)は一般に腐食性が強く、
  金属やコンクリート構造物を劣化させるといわれています。

  自然水中のアルカリ分は主に地質(特に石灰岩)から供給される成分ですから、
  アルカリ度は地質条件を推定するうえでよい指標となります。
  また下水や鉱工業排水の影響を受けると著しく増減するので、水質汚濁の指標にもなります。
  また、凝集剤が効果を発揮するためには一定のアルカリ分を必要とすることから、
  浄水処理においてもアルカリ度は重要な指標となります。


  10)酸度(acidity) アルカリ消費量ともいう

  アルカリ度と逆に、試料水に強アルカリ(水酸化ナトリウムなど)を加えて、
  所定のpH値に中和するのに必要なアルカリの量をme/lまたはCaCO/lで表したものです。

  pH値の設定はアルカリ度と同様ですが、pH8.3(または9)酸度が総酸度となり、
  pH4.3(または4.8、5)酸度を鉱酸酸度といいます。
  鉱酸酸度は塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸に起因する
  水素イオン(H)量に対応するものです。(図3−9参照)

  自然水の酸度は主として遊離炭酸(水中に溶けている炭酸ガス)によるもので、
  その場合、次式によって酸度から遊離炭酸量を概算することができます。

  遊離炭酸(CO/l)=〔総酸度(CaCO/l)−鉱酸酸度(CaCO/l)〕×0.88

  地下水や温鉱泉水、鉱工業排水では、種々の強酸、弱酸、有機酸、
  および OHと反応して水酸化物として沈澱する
  金属イオン(鉄、アルミ、マンガンなど)などのアルカリ消費成分を含むことがあります。

  通常の河川調査では、遊離炭酸量を推定する意味で pH8.3酸度が測定されるだけで、
  pH4.3 やpH4.8 の酸度は0ですからあまり重要視されませんが、
  自然毒水といわれる無機酸性水の調査では重要な項目となります。


 11)陰イオン界面活性剤(anionic surfactant)

   またはメチレンブルー活性物質(methylene blue active substances:MBAS

  界面活性剤は、微量を添加するだけで液体の表(界)面張力を
  著しく低下させる性質を持つ物質の総称で、
  洗剤や乳化剤、湿潤剤、分散剤、起泡剤、帯電防止剤などとして、
  家庭用および工業用に広く利用されています。

  界面活性剤は、陰イオン(アニオン)型、非イオン(ノニオン)型、
  陽イオン(カチオン)型、両性型の4種に大別されますが、
  陰イオン界面活性剤が消費量の大半を占めています。
  陰イオン界面活性剤にはセッケンも含まれますが、
  水質汚濁上問題になるのはABSLASに代表される合成洗剤です。

  ABS(アルキルベンゼンスルホン酸塩)は、かつては合成洗剤の主流を占めたものですが、
  安定な化合物で自然にはほとんど分解されない(ハード型)ため、
  河川や下水処理場で発泡するなどの障害を引き起こし、
  魚介類や人体に対する毒性の点からも問題になりました。
  そのため、現在は微生物によって分解されやすいソフト型の洗剤が主流となり、
  LAS(直鎖型ABS)その代表的なものです。ソフト型洗剤の普及によって、
  発泡による障害は軽減されましたが、毒性はむしろソフト型の方が強いともいわれています。

  陰イオン界面活性剤にはLAS、ABSの他にも多くの種類があり、
  それらを分別して分析することは困難なため
  一括してメチレンブルー法によって測定しますが、
  この分析法には妨害物質がかなり多く、
  測定される物質がすべて陰イオン界面活性剤であるとは限らないため、
  MBASと呼ぶほうが正確です。


 12)硫酸イオン(SO2−

  硫黄化合物も窒素化合物と同様に自然界で循環を形作っており、
  硫酸イオンはそのもっとも酸化が進んだ形です。
  水中に入ってきた硫黄化合物は、
  好気的環境ではしだいに酸化分解されて硫酸イオンになります。

  硫黄は硫酸塩(sulfate)または硫化物(sulfide)として地質中に広く分布しているので、
  硫酸イオンも自然水中に普通にみられますが(100/l以下程度)、
  高濃度に検出される場合は、鉱山排水、温泉水、工場排水、化学肥料、
  下水、し尿などの混入が疑われます。
  海水は多量の硫酸イオン(約2600/l)を含むので、河川の感潮域では濃度が高くなります。

  硫酸イオンを多量に含む水は、鉄管などを腐食したり、永久硬度が高いことが多いので、
  家庭用水や工業用水として好ましくありません。


 13)硫化物イオン または硫黄イオン(S2−

  水中の硫化物は、溶存態の硫化水素(HS)、HS、S2−および
  懸濁態の各種金属硫化物に大別されますが、
  水質試験では普通これらを一括して硫化物イオンと呼びます。
  これらは硫黄化合物のサイクルの中で、もっとも還元された状態のもので、
  溶存酸素があればすみやかに酸化されて硫酸イオンになりますから、
  硫化物イオンが検出されるということはその水が嫌気性状態にあることを示すものです。

  硫化物イオンは通常の自然水中にはほとんどみられませんが、
  富栄養湖の底層水や汚濁した河川の感潮域
  (海水中の硫酸イオンが硫酸還元菌によって硫化水素になる)ではしばしば検出されます。
  また下水やし尿(中のタンパク質)の嫌気性分解、パルプ、繊維、ガス製造、皮革、
  染色などの工場廃水、鉱業廃水、硫黄温泉水などに由来する場合もあります。

  硫化水素は強い悪臭(いわゆる腐った卵の臭い)を持つだけでなく、
  金属を腐食し、毒性が強いため魚介類に悪影響を与えます。

  汚濁の進んだ水域の底泥や水が黒くなるのは、
  主に硫化第一鉄(FeS)が生成することによります。


 14)ナトリウム(sodium:Na)

  ナトリウムイオン(Na)は淡水の主成分で、岩石や土壌からの溶出、
  大気中の海塩粒子およびそれを核とする雨水などに起因して、
  一般の河川水中に1〜10/l程度含まれています。

  ナトリウムイオンは土壌への吸着力が弱いので、
  地下水と土壌粒子とのイオン交換によって放出されやすく、
  地下水は流れるにしたがってナトリウム分が増加する傾向があります。

  人間活動から放出されるナトリウム化合物は主として食塩(NaCl)ですから、
  ナトリウムイオン濃度そのものよりも、Na/Cl比を検討することが重要です。


 15)カリウム(potassium:K)

  カリウムイオン(K)もまた淡水中にごく普通にみられる成分ですが、
  比較的微量で一般の河川では0.5〜3 /l程度です。
  その主な起源は岩石土壌にあると考えられますが、詳細な挙動はまだ検討されていません。
  カリウムは肥料の3要素の一つであり、植物体内に濃縮されているので、
  生物を媒介とする循環を重視して調査を進める必要があります。

  当然富栄養化現象とも密接な関係がありますが、
  窒素やリンに比べて自然水中に十分含まれているので、あまり問題にされません。

  高濃度に検出される場合は、ある種の工場排水や農業排水の影響が考えられます。


 16)アルミニウム(aluminium:Al)

  アルミニウムは地殻中の存在度は酸素、ケイ素についで第3位で、
  金属としては土壌中にもっとも多く含まれるものです。
  したがって自然水中にも当然含まれますが、中性付近では溶解度が小さいため比較的微量で、
  わが国の河川水の平均濃度は0.04/l程度とされています。

  アルミニウム化合物は、一般に吸収率が低いため経口毒性はほとんどありませんが、
  組織内のリン代謝を阻害することが指摘されています。
  現在のところ水質規制は行われていませんが、水産用水基準では 0.1/l以下、
  水道水の快適水質項目の目標値は 0.2/l以下とされています。

  浄水・廃水処理においては、硫酸バンド(Al(SO))、
  PAC(ポリ塩化アルミニウム)などのアルミニウム化合物が、
  凝集剤としてよく使用されます。


 17)スズ(tin:Sn)

  スズは自然界に広く分布していますが、河川水中に含まれることはまれです。

  無機スズは消化管からの吸収率が低く、吸収されても排泄されやすいために毒性は弱く、
  水産用水基準(1.0 /l以下)があるだけで水質規制は行われていません。
  ただし、古い缶詰などでまれにみられるような極端な高濃度(数百ppm)のものを摂取すると、
  嘔吐、下痢などの急性胃腸炎症状を起こします。


 18)有機スズorganotin compound OT)

  1から4個の炭素鎖(アルキル基またはアリール基)がスズ原子と結合した化合物で、
  Di-体(炭素鎖が2個:ジブチルスズ、ジオクチルスズなど)は主に
  塩化ビニルの安定剤として、Tri-体(炭素鎖が3個:トリブチルスズ(TBT)、
  トリフェニルスズ(TPT)など)は
  主に殺虫剤、殺菌剤として使用されています。

  有機スズ化合物の体内蓄積性は低く、発ガン性や催奇形性は報告されていませんが、
  皮膚、気道、角膜への刺激のほか、動物実験では肝臓障害、腎臓障害、
  白質の浮腫形成による中枢神経系の障害、胸腺萎縮などによる免疫阻害、
  胎児死亡率の増加などの障害が知られています。

  有機スズ化合物の中で近年特に注目されているのは、
  船底塗料や漁網防汚剤として広く用いられているTBT化合物で、
  哺乳動物に対する毒性はトリエチルスズやトリメチルスズよりも低く、
  (一般に炭素鎖が長いほど毒性が低い)それ故
  上記用途に広く使用されるようになったものですが、
  カキの殻の変形や生存数の減少に影響があるなどの
  有害性を認めた報告が相次いだため、
  環境に及ぼす影響がみなおされてきています。
  厚生省は食品からのTBT化合物の暫定許容摂取量を 1.6μg/kg・日としています。
  また、昭和62年には全国漁業協同組合連合会と全国かん水養魚組合は、
  有機スズ系防汚剤使用禁止を申し合わせました。
  さらに、平成元年に厚生、通産両省はTBTO(ビス(トリブチルスズ)=オキシド)を
  化審法の第一種特定化学物質に指定して製造・輸入を全面禁止、
  他のTBT化合物13物質とTPT化合物7物質を第二種特定化学物質に指定して
  製造輸入の予定数量を事前に届け出ることを義務づけるなど、規制が強化されました。

  環境基準の健康項目や要監視項目は人の健康の保護の観点から設定されているため、
  平成3年の環境基準の見直しでは有機スズ化合物を取り上げることは見送られましたが、
  化学物質による水生生物や生態系への影響の防止といった観点からの環境基準設定の考え方は
  既にアメリカなどでも取り入れられており、わが国でも将来、
  有機スズ化合物に対して環境基準や排水基準が設定される可能性があります。


 19)ヨウ素消費量(iodine consumption)

  水中の硫化物、亜硝酸塩、第一鉄塩、一部の有機物などの酸化されやすい物質の総量を、
  ヨウ素と反応させたときに消費されるヨウ素量で表したものです。

  測定される物質の内容はあまり明確ではありませんが、簡単に測定できるため、
  試料の還元力の強さを測る場合や、硫化水素の量を推定する場合などに測定されます。


 20)一般細菌

  一般細菌とは、試験方法によって定められた培地に生育できる種々の好気性および
  通性嫌気性細菌の総称で、その数は一般に有機汚濁が高いほど多くなります。
  大腸菌群がし尿汚染などによる衛生上の安全度を示す指標であるのに対して、
  一般細菌は水の一般的な汚濁度の指標となります。

  一般細菌数は、検水1ml中の個数(培地に現れた集落数)で表しますが、一般に

    100〜 200個/ml以下:ほとんど汚濁の進行していない水域

    1000〜10000個/ml以下:中程度に汚濁した水域

    10000個/ml以上:強度に汚濁した水域

  と判定できます。ただし、毒物による汚染を伴っている場合は、
  理化学試験によって汚濁が認められても、細菌数は極端に少ないか、
  全然検出されないこともありえます。


 21)残留塩素

  塩素処理の結果、水中に残留した有効塩素(酸化力を有する形の塩素)をいい、
  塩素イオン(Cl)とは化学的に性質が異なるものです。
  遊離残留塩素(次亜塩素酸 HClOおよび次亜塩素酸イオンClO)と
  結合残留塩素(アンモニアや有機性窒素化合物などと結合した塩素。
  クロラミン NHClなど)があります。

  水道法では、給水栓における水が遊離残留塩素
  0.1ppm以上(結合残留塩素の場合は 0.4ppm以上)を保持するよう
  塩素消毒することが定められていますが、水道水中の残留塩素は塩素臭を残し、
  水道管の腐食の原因となるなどの問題点を持っています。
  また、近年は、水道水源の汚濁化に伴い塩素処理によって
  トリハロメタンなどの発ガン性物質を生成することも指摘されています。


 22)トリハロメタンtrihalomethane:THM

  メタン(CH)の4個の水素原子のうち3個が
  ハロゲン原子によって置換された物質の総称で、
  通常は、クロロホルム(トリクロロメタン CHCl)、
  ブロモジクロロメタン(CHBrCl)、ジブロモクロロメタン(CHBrCl)、
  ブロモホルム(トリブロモメタン CHBr)の4種を指します。

  クロロホルムは発ガン性が証明されており、
  他の3種も変異原性が確認されている物質ですが、近年、
  水道原水中に含まれる有機物(フミン質等)と浄水過程で用いられる塩素との反応によって
  クロロホルムを始めとするトリハロメタンが生成することが指摘され、問題となっています。
  厚生省は水道水中の総トリハロメタン(上記4種の合計)の
  制御目標値(年平均0.10/l以下)を定めていましたが、平成4年12月より、
  上記4種のそれぞれと総トリハロメタンについて、水道水質基準が定められました。


  *トリハロメタン生成能

  一定の条件で塩素処理を行なったときに生成されるトリハロメタン量をいい、
  トリハロメタン前駆物質量の指標とします。
  トリハロメタン前駆物質は多くの有機物が関与しており、
  その構造が不明確なため直接測定することはできません。
  自然界由来の腐植質(フミン酸、フルボ酸など)が主ですが、
  都市下水や工場排水由来の有機物も含まれます。
  また、プランクトンも前駆物質となり、
  藻類が大量に繁殖した湖沼の水はトリハロメタン生成能が高くなります。


 23)揮発性有機化合物(volatile organic compound:VOC)

  上水試験方法(1993)では、トリクロロエチレン、
  トリハロメタンなどの低沸点有機ハロゲンと、トルエン、
  クロロベンゼンなどベンゼン環が1個の芳香族化合物の、
  あわせて57種を一括して揮発性有機化合物と呼んでいます。
  これらは物理化学的性状や用途、環境中の挙動が類似しており、分析方法もほぼ共通です。


 24)TOX(total organic halide:全有機ハロゲン

  水中の有機ハロゲン化合物の総量を塩素換算量(mgCl/l)などで表したものですが、
  有機フッ素化合物は含まれません。
  塩素処理によって生じる有機ハロゲン化合物には
  トリハロメタンの他に種々の不揮発性のものがあり、
  水道水中のトリハロメタンは通常TOXの20〜30%にすぎません。
  トリハロメタンがこれほど問題になったのは、
  たまたまガスクロマトグラフで容易に検出できたためであり、
  健康影響の観点からは不揮発性の有機ハロゲンも重要であることから、
  TOXをより重視すべきであるという意見があります。


 25PCPpentachlorophenol)

  有機塩素系の農薬で、除草剤、殺菌剤、シロアリ駆除剤、木材防腐剤などの用途があります。

  主に水田用除草剤としてかつて多用されましたが、
  魚毒性が強く、しばしば魚類の死亡事故を引き起こしました。
  人体に対しても、食欲不振、甘味嗜好、多量発汗、不眠、倦怠感、
  関節痛、クロルアクネ、黒皮症などの中毒症状を引き起こします。

  1971年に農薬取締法の水質汚濁性農薬に指定されてからは、
  製造量、使用量ともに激減しました。


 26)クロルデン(chlordane)

  有機塩素系の殺虫剤で、単一の化合物ではなく
  十数種の異性体や関連化合物からなるものです。

  農薬としての登録は1968年に失効していますが、使用量が増えたのはむしろ登録失効後で、
  シロアリ駆除剤、合板接着剤への添加などに多量に使用されました。
  しかし、1986年9月に化審法の特定化学物質(現行法では第一種特定化学物質)
  の指定を受けてからは、すべての用途で製造、販売、使用が事実上禁止されています。

  人体の急性中毒症状は、吐き気、下痢、けいれんなどで、経皮毒性も強く死亡例もあります。
  慢性中毒症状は中枢神経刺激、肝腎障害、肺水腫、消化管刺激などで、
  動物実験では発ガン性も確認されています。
  蓄積性も高く、母乳や血液で1〜2ppb、魚介類では数十ppbの汚染が報告されています。


 27)四塩化炭素抽出物質(carbon tetrachloride extractable substance)

  油分の試験法の一つで、四塩化炭素によって抽出される物質を
  赤外線吸収によって測定し、OCB混合標準物質
  (イソオクタン:O、セタン:C、ベンゼン:Bを一定の比率で混合したもの)
  の対応量で表示するものです。


 28)コプロスタノール(coprostanol C2748O)
   コプロステロール(coprosterol)ともいう

  ヒトおよび家畜の糞便中に特徴的に含まれるステロール類の一つで、
  コレステロールが前駆物質となって腸管内で嫌気性細菌によってできる代謝産物です。

  し尿汚染の指標として大腸菌群が広く用いられていますが、
  大腸菌群の項でも述べたように現行の大腸菌群測定法にはいくつかの問題点があり、
  指標として十分なものとはいえません。
  そこで、大腸菌群に代わる指標としていくつかのものが提案されていますが、
  コプロスタノールも有望なものの一つです。


                           O
                           ‖
 29)アクリルアミド(acrylamide  CH=CH−C−NH

  アクリル酸アミド(acrylic amide)、プロペンアミド(propenamide)ともいう。

  白色の薄片状または粗粒で、水やアルコールによく溶けます。
  室温では安定ですが加熱すると激しく重合し、重合体が紙質増強剤、
  凝集剤、土壌改良剤、樹脂、接着剤などに使用されています。

  モノマーは有毒で、皮膚からも容易に吸収され、
  接触局所の皮膚障害と全身障害を引き起こします。
  慢性中毒症状としては末梢神経障害
  (手足のしびれ、脱力感、歩行障害など)が特徴的で、
  異常発汗、下痢、嘔吐などを伴う場合もあります。
  急性中毒については人間では例がありませんが、
  動物実験では振せん、全身衰弱、運動失調、痙攣などを生じ、
  重症な場合は昏睡状態となって死亡するとされます。

  昭和49年には福岡県で地盤凝固剤して用いられたものが井戸水を汚染し
  (重合が不十分でモノマーが残存した)、飲用した家族5人に中毒が起こった例があります。
  その後、地盤凝固剤としての使用は規制されましたが、
  水質浄化のための沈降剤(いわゆる高分子凝集剤)
  などによく用いられているので、注意が必要です。
  環境庁が平成3年度に実施した化学物質環境調査の結果によると、
  水質については全国51の調査地点のうち大和川河口など5地点で最高0.1μg/lが、
  底質については全50地点中7地点で最高3μg/kgが検出されています。


 30)1,4-ジオキサン(1,4-dioxane C
   ジエチレンオキシド(diethylene oxide)などともいう

  穏やかな香りをもつ無色の液体で、各種の工業溶剤などに用いられます。
  引火・爆発の危険性大。

  粘膜に強い刺激性があり目や肺に障害を起こすほか、
  体内に吸収されると中枢神経抑制(麻酔)や重症の肝・腎障害を引き起こします。
  動物実験では肝ガンの発生も知られています。

  化審法の指定化学物質に指定されており、
  水質や底質の調査対象物質として取り上げられることがあります。


 31)毒性試験(toxicity test)

  供試生物に重金属や化学物質を含んだ環境を与えてその致死量などを求めるもので、
  次のように分類されます。

機グ貳牝農試験 供テ端貽農試験
1.急性毒性試験 acute toxicity tests

2.短期毒性試験 short-term toxicity tests

(亜急性毒性試験)(subacute toxicity tests)


3.長期毒性試験 long-term toxicity tests

(慢性毒性試験)(chronic toxicity tests)
1.局所刺激試験 local irritation tests

2.アレルギー性試験 allergic reaction tests

3.催奇形性試験 teratogenicity tests

4.繁殖試験 reproduction tests

5.依存性試験 dependence liability tests

(6) 発ガン性試験 carcinogenicity tests


  水環境における毒性物質の評価には、
  魚類やミジンコに対する急性毒性試験がよく用いられます。


  [1]TLm(median tolerance limit:半数致死濃度

   急性毒性試験の結果、供試動物群の50%が生き残る濃度をいい、
   48hrTLm、TLm(3時間)というように接触時間を併記します。
   農薬の魚毒性は、コイの稚魚およびミジンコに対するTLm値などを基準に、
   次の表のように分類されています。



表3−3.魚毒性の分類(農薬取締法)
分 類 コイ 48hrTLm 使 用 上 の 注 意 等
10ppm以上 かつ、ミジンコに対する3hrTLmが 0.5ppm以上のもの。

通常の使用方法では毒性は問題ない。
10〜0.5ppm またはミジンコに対する3hrTLmが0.5ppm以下のもの。

通常の使用方法では影響は少ないが、
一時に広範囲に使用する場合には十分注意する。
Bs 2ppm以下 またはコイ以外の魚種に対する48hrTLmが0.5ppm以下、
またはヒメダカに対して0.5ppm以下で
死に至らない程度の影響を与えるもの。
B類の中でも特に注意を要する(special B rank)。
0.5ppm以下 河川、湖沼、海域および養殖池に飛散
または流入する恐れのある場所では使用せず、
これら以外でも一時に広範囲に使用しない。

器具、容器の洗浄水や空袋などは、土中に埋めるなど、
魚介類に影響を及ぼさない所に処理する。
0.1ppm以下 水質汚濁性農薬。使用禁止地域では使用しない。
また、使用制限措置のとられている地帯では
その使用条件に従って使用する。


表3−4.各種試験生物によるTLm(24hr)の比較(その1)
(/l)
生 物(平均体重)
薬  剤
和 金
(2.7g)
ヒメダカ
(0.30g)
グッピー
(0.73g)
アカヒレ
(0.052g)
ヌカエビ
(0.056g)
シアン化カリ(CNとして) 0.30 0.28 0.52 0.26 0.19
塩 化 銅(Cuとして) 0.090 0.070 0.042 0.020 0.018
EPN乳剤 1) 2.4 2.4 0.13 0.76 0.0010
ダーズバン 2) 29 13 1.2 240 0.00036

 (試験条件)試水量:3l 水温:20℃前後  1) EPN45% 2) クロルピリホス25%

 (近畿技術事務所実験結果による)



表3−5.各種試験生物によるTLm(24hr)の比較(その2)
(/l)
魚 種
薬 剤
アカヒレ
(0.05g)
ヒメダカ
(0.35g)
グッピー
(0.14g)
コ イ
(0.41g)
キンギョ
(2.8g)
オイカワ
(1.3g)
ニジマス
(0.39g)
昇こう
(Hgとして)
0.58 0.74 0.38 0.47 0.48 0.17 0.49
硫酸亜鉛
(Znとして)
8.6 18 11 20- 26 3.3 1.1
シアン化カリ
(CNとして)
0.24 0.43 0.43 0.33 0.55 0.12 0.09
塩化アンモン
(N として)
93 76 98- 53 90 31 16
酢   酸 4,000 11,000 8,800 7,700 8,400 8,400 8,400
フェノール 26 25 50 47 34 25 15
タンニン酸 48 140 66 46 24 24 8.4
PCP
ナトリウム塩
0.31 0.40 0.86 0.18 0.37 0.23 0.16

(試験条件)水温:ニジマス以外はすべて25℃。ニジマスは12〜13℃。

(田端による)



  [2]LC(lethal concentration:致死濃度

   LC25とか、LC50のように死亡率(%)を併記します。
   また、TLmと同様に接触時間も併記します。

   LC50はTLmと同じことです。


  [3]EC(effective concentration:影響濃度
    IC(inhibition concentration:阻害濃度)ともいう。

   LCが供試生物への影響を死亡率でみるのに対し、
   供試生物群に対して死に至らない程度の影響
   (呼吸阻害、成長阻害など)を及ぼす濃度をいいます。
   たとえば、被験物質の濃度を段階的に変化させた培養液で
   プランクトンなどの微生物を培養し、
   対照区と比較して比増殖速度が50%低下する濃度をEC50といいます。


  [4]LD(lethal dose:致死量

   LCと同様ですが、濃度でなく負荷量で表現するものです。
   普通、動物の体重1kg当りの薬量(mg)で表します。

   毒物及び劇物取締法による化学物質の人畜毒性の分類は、
   動物実験による急性毒性や皮膚・粘膜に対する刺激性、ヒトの事故例、
   物質の物性、解毒法の有無、使用頻度などを考慮して定められますが、
   動物実験による急性毒性に関しては次のような基準が示されています。

     経口 毒物:LD50が30/坩焚爾里發

        劇物:LD50が30/圓鯆兇300/坩焚爾里發

     経皮 毒物:LD50が100/坩焚爾里發

        劇物:LD50が100/圓鯆兇1,000/坩焚爾里發

     吸入 毒物:LC50が200ppm(1時間)以下のもの。

        劇物:LC50が200ppm(1時間)を超え2,000ppm(1時間)以下のもの


  [5]濃縮毒性値

   AOD(Aquatic Organisms environmental Diagnostics;水族環境診断法)の一つで、
   試水を段階的に凍結濃縮した溶液で魚類を飼育し、
   毒性が48hrLC50に相当する場合の濃縮倍数を%表示で表します。
   もとの自然水を 100%液と呼び、たとえば10倍濃縮液が48hrLC50に相当すれば
   濃縮毒性値 1,000%と表示します。


  [6]ADI(acceptable daily intake:一日摂取許容量

   ヒトが毎日この量の薬剤を摂取しても一生無影響であろうという最大値で、
   主として農薬類について、体重1堙りの咫吻咫伸埖僚邸親)で定められています。

   慢性毒性試験は、実験動物に急性毒性を示さない程度の薬剤を
   その動物のほぼ一生涯にわたって繰り返し投与して、
   中毒経過とその用量(確実中毒量)とまったく影響を認めない用量(最大無作用量)を
   明らかにするものですが、その結果得られた最大無作用量を
   そのままヒトに適用するのは危険なので、
   通常1/100(実験内容やヒト中毒例の有無によって1/10〜1/500)の安全係数をかけて、
   ヒトに対するADIが算出されます。
   ただし、発ガン性に対しては許容量というものは存在しないため、
   ADI以下であっても発ガンリスクを0にすることはできませんし、
   また毒物に対する感受性の強い乳幼児や病人に対してそのまま適用することは危険です。


表3−6.主な農薬のADI
農  薬 ADI(咫伸埖僚邸親) 農   薬 ADI(咫伸埖僚邸親)
アルドリン    0.0001  リンデン(γ−BHC)    0.01
ディルドリン    0.0001  チラム    0.005
クロルデン    0.001  ジメトエート    0.02
DDT    0.005  ダイアジノン    0.002
DDVP    0.004  デメトン(シストックス)    0.0025
マンネブ    0.05  パラチオン    0.005
ジフェニル    0.125  フェニトロチオン(MEP)    0.005
ピレトリン    0.04  マラチオン(マラソン)    0.02
FAOWHO合同食品規格委員会残留農薬規格部会1982による)




  水質基準との関係では、通常、人の体重を50kg、1日あたりの飲料水を2l、
  飲料水の寄与率を10%として、飲用に供しても安全と見なせる濃度が算出されます。

  たとえば、ダイアジノン(ADI:0.002mg/kg/day)の場合、

   0.002[mg/kg/day]×50[kg]×10%÷2[l//day]=0.005[/l] 

  となります。

  水道水質基準や健康項目の環境基準値および要監視項目の指針値は、
  おおむねこの考え方に沿って設定されています。

  [7]変異原性(mutagenicity) 突然変異原性、遺伝毒性ともいう

   化学物質等が生物の遺伝子(DNA)に作用して、選択的に化学反応を起こしたり、
   その分子構造の一部を変えたりして本来の遺伝的性質を変える働きをいいます。

   変異原性を持つ化学物質、天然物質は6000種もあるといわれ、
   そのままで変異原性を示すものと、生体内で代謝を受けた結果、
   変異原性を示すものがあります(後者の方が多い)。
   よく知られているものとして、タバコの煙
   (ベンゾ[α]ピレン(旧命名法では3,4-ベンツピレン)等)、
   魚の焼けこげ(トリプトファン等)、ピーナッツのカビ(アフラトキシン)、
   亜硝酸塩とタンパク質が反応してできるニトロソアミン類、
   塩化ビニルモノマーなどがあります。

   ガンの原因は未だに解明されていませんが、
   発ガンが突然変異によるのではないかという考え方は古くからあり、
   現在でも発ガン性と変異原性の間には類似した反応機構があると考えられています。

   動物実験による発ガン性試験は長期間の観察と莫大な費用を要する
   (通常、2種属以上の動物の試験群と対照群:各群雌雄50頭以上について
    2種類の濃度の試料で2年間にわたる膨大な実験が必要)ため、
   発ガン性のスクリーニング試験として迅速かつ高感度な変異原性試験が活用されています。

   ただし、変異原性を示す物質は必ず発ガン性があるとは限らず
   (最近の知見では55〜70%の重複度)、逆に、少数ながら
   発ガン性があるにも関わらず変異原性を示さない物質
   (たとえばクロロホルム)もあります。


図3−10.変異原物質と発ガン物質の関係の移り変わり(杉村隆、松島泰次郎 1978)


  変異原性試験には、サルモネラ菌、大腸菌、枯草菌等の微生物の突然変異を検出する方法や
  細胞の染色体異常を観察する方法のほか、植物、昆虫類、哺乳類を用いる方法もあります。


  *エイムス試験(Ames test)

  微生物による変異原性試験の代表的なもので、エイムス(B.N.Ames)によって分離された
  ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)のヒスチジン(アミノ酸の一種)
  要求性変異株(his)が、被検物質によって
  被要求株(his)になる復帰突然変異を利用するものです。
  すなわち、ヒスチジンを加えない培地において、
  代謝活性物質(S9)を加えたものと加えないものについて、
  被検物質を混ぜて菌(his)を培養し、
  被検物質を混ぜない場合のコロニー数より多くのコロニーが出現すれば、
  その物質の変異原性は陽性と判定されます。



「平成8年2月 水質調査の基礎知識(近畿地方整備局近畿技術事務所)より抜粋」